「おうちに帰りたい」のおうちはどこにあるのか

庭のある祖父母の我が家が
暖かい海辺の町にあった
庭にはみかんがたわわになっていて
梅もたくさんなっていた
そこには全てがあった
幸せの記憶も
ひとをどこか落ち着かせて
幸せな気持ちになる
庭のある家

「おうちに帰りたい」
って10代の頃から
誰かが口癖みたいに言ってた
誰かに必要とされないと
そこに居場所がないかのような

震災が起きて、
庭は少し放射能で汚染された
家にしがみついていれなくなった

いろんな家財道具の中で
写真が一番捨てにくい
記憶が一番捨てにくい
体は死んだらなくなるから持って行く
冥土のみやげには体は持っていけない

体の中にふるさとがあって
どこでもドアみたいに
そこが家になる

誰にも必要とされなくても
生きてていい
だれかの不幸せを代償に
生きていていいのかな
気にしていたら、キリないくらい?
日本に生まれたことは 幸せ?
どこに生まれても 息をしているだけで
十分に幸せなひともいる

帰るおうちはきっとない
ずっと旅 日を別にする旅

閉ざされた空間では
赤ちゃんはお母さんを求めて泣くのに
冒険するときは忘れていられるのね
おもしろいね
旅をするときは
世界が家になるのだろう