○放射線障害防護剤

放射線防護剤というものが、日常的に、福島や原発作業員の人に配られたり、

放射能に対して、どのような食生活をすれば健康になるか気をくばったり、

そういうこと。放射線、とくに低線量の被爆の閾値を示すこと。

人によって差異はあるけれど、とくに農薬との関連、相乗作用を示すこと。


○ 活性酸素によるミトコンドリアの老化について

ミトコンドリアは、細胞の中に あるエネルギー代謝に関わる「細胞内小器官」です。細胞内のカルシウムイオン濃度 の調節や細胞の生死の決定など、生命にとって極めて重要な役割を果たしています。 ミトコンドリアは細胞核の DNA とは別に、独自の DNA を持っています。二分裂で殖えます。細菌と似たところが多いため、現存真核細胞の祖先に飲み込まれた細菌に由来すると考えられています。このミト コンドリア DNA は個人差が大きく、さまざまな病気の発症に関与していると考えら れるとともに、長寿や運動能力などいろいろな身体の働きの個人差と関連していると 考えられています。 

 

ミトコンドリアは糖などの食物分子の酸化で得たエネルギーを利用して、アデノシン三リン酸(ATP)をつくります。

ATPは細胞の活動の動力源となる基本的な化学燃料です。

ミトコンドリアが働くと酸素を消費し、二酸化炭素を放出するので、この反応を細胞呼吸といいます。

 

細胞呼吸で酸素が使われる際に、これらの酸素の一部は、代謝過程において「活性酸素」と呼ばれる反応性が高い状態に変換されることがあります。

 

発生した活性酸素・フリーラジカルは様々な物質に対して非特異的な化学反応をもたらし、細胞に損傷を与え得るために、その有害性が指摘されています。それを防ぐために各組織には抗酸化酵素と呼ばれる、活性酸素・フリーラジカルを消去あるいは除去する酵素が存在します。

 

しかしながらミトコンドリアでの活発なエネルギー変換の過程で、次第に活性酸素が蓄積し、それが酸化ストレスとなってミトコンドリアを傷つけます。

近年、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経疾患の発症おいて、このような酸化ストレスによるミトコンドリアの機能低下が原因として注目されています。

また、体内中の一酸化窒素の過度な生産は、ミトコンドリアの機能不全をきたし、細胞死をみちびきます。

酸化ストレスにさらされて傷つき、不要になったミトコンドリアは分解される必要がありますが、酵母や人のような真核生物の体内では専用のたんぱく質が“分別マーク” のような役割を果たすことにより、古くなったミトコンドリアが分別処理される仕組みがあります。

 

 

 

 

○ミトコンドリアDNAの損傷・突然変異と各疾患の関係

2008年、筑波大学大学院・生命環境科学研究科の研究グループは、ミトコンドリア呼吸酵素複合体Ⅰの活性を低下させる病原性突然変異がmtDNAに生じることにより、ミトコンドリアのATP合成機能が低下し、それに伴って生じる活性酸素種(以下、ROS)の増加によって核DNAにコードされた幾つかの遺伝子の発現量が増加するという一連の過程を経て、最終的にがん細胞の転移能が可逆的に上昇することを、マウスのがん細胞を用いて明らかにしました。また、同様の現象がヒトの一部のがん細胞でも起こりうることもわかりました。 

 

2010年、筑波大学の林純一教授と国立国際医療研究センターのグループは、細胞内の小器官であるミトコンドリアDNAに変異があると、体の免疫がその細胞を異物と判断して攻撃することをマウス実験で発見しました。
このDNAにわずかな変異があると、細胞表面にも変化が現れ、免疫が異物と認識するようになることが分かりました。

 

 また同研究グループは2012年に、ミトコンドリアDNAの突然変異により活性酸素を過剰生産するタイプと、変異はしているが活性酸素の過剰生産しないタイプのモデルマウスを作製し、この2種類のモデルマウスを同じ条件下で生育し、野生型マウスと比較し、生命活動にどのような影響があらわれるかを調べてみました。実験は、活性酸素を過剰生産するタイプでのみ糖尿病とリンパ腫が発症するという結果になりました。

 

 

○放射性物質と内部被爆

facebook 辻直樹先生の文章より引用

低線量内部被爆はいまだその影響についてはっきり解っていないその理由として「取り込まれた放射性物質の総線量が計測できない 」という部分が大きいことです。

 

とはいえ、放射線が生体に与える影響は大きく

*外被爆:直接被爆→皮膚を貫くガンマ線、中性子線などによる熱傷〜DNA障害

*内被爆:直接作用→放射線によるDNAの直接作用による障害

*内被爆:間接作用→放射線と水が反応することによって発生する活性酸素による酸化劣化

 に分けられると考えられます。

 

この内問題となるのが「低線量内被爆による間接作用」です

 

低線量の放射線を放出する放射性物質が生体内に入ると、放射線とその回りに存在する水が反応することにより、活性酸素の一つである『スーパーオキシドアニオン:O2・-』が発生します

 

この活性酸素は多くの物質から電子を奪い、酸化劣化を起こしますが、細胞膜を構成する「リン脂質」の酸化は大きな問題です

 

細胞膜は、細胞内外を分離し、物質を透過させ、ホルモンなどの受容体を持っています。その細胞膜が酸化劣化を起こすということは、細胞自体の機能を低下させることに等しいと言えます。

○バイスタンダー効果

大分大学医学部付属先端分子イメージングセンターHPより引用

 

放射線照射された細胞は放射線の電離作用によりDNA損傷をはじめとする様々な傷を受ける。最近になって、この電離作用を受けない箇所でも損傷が誘発される現象が報告さされるようになった。これを「バイスタンダー効果」という。例えば、細胞集団の中の一部の細胞(または細胞内の一部)が照射された場合、照射された細胞(部位)から照射されていない細胞(部位)へ何らかのシグナルが伝えられ、照射されていない部位でも損傷が生じるのである。このように放射線の標的になっていないのに影響が及ぼされることを「非標的効果」と呼ぶ。

 

以下に最近の成果を簡単に報告する。細胞はCHO細胞を用いた。実験系としては、放射線照射されたT25フラスコ内の細胞の培養上清を回収し、別に用意されたT25内の非照射細胞へ処理する手法(メディウムトランスファー法)を用いた(図1)。照射は0.2Gy~4GyのX線を用いた。


1.ミトコンドリア膜電位の低下


放射線照射分泌性因子の作用により顕著なミトコンドリア膜電位の低下がみられた。この低下レベルは0.2Gy~1Gyの照射線量域でほとんど変わらなかった(図2)。従って、放射線で誘導される分泌性因子は比較的低線量の照射でも機能することが示唆される。また、分泌性因子を処理してからの時間を追って調べると、処理後1時間で膜電位の低下は十分に引き起こされ、その後低下レベルを維持していた。


2.ミトコンドリア内活性酸素(O2-)の増加


放射線照射分泌性因子の作用により顕著なミトコンドリア内活性酸素(O2-)の増加がみられた。この増加レベルは2時間後から6時間後まで高かった(図3)。分泌性因子を24時間処理した時、HPRT領域の突然変異頻度が高くなるという結果も得られている。これらの結果は、細胞内酸化レベルの増加により突然変異が誘発される可能性を示唆している。

 

分泌性因子を介したミトコンドリア機能の調節について、今回はCHO細胞の結果を示したが、ヒト正常細胞やヒト癌細胞でも同様の傾向が見られている。従って、分泌性因子を介したミトコンドリア機能の調節、細胞内酸化度の調節は、放射線を感知するセンサーから応答するエフェクターへの普遍的な反応の一環と捉えることができる。分泌性因子の正体は、複数のサイトカイン類である(Ivanov et al, 2009, Cell Signal)ので、単一因子の経路に限定した解析手法では機構を解明できない。そのため、分泌性因子を限定する前に、複合的な分泌性因子(照射細胞の培養上清)の作用の結果、「なぜ液性因子(混合物)がミトコンドリアの機能に影響を及ぼすのか」について、メカニズム解明を目指している。

セシウムと心筋ミトコンドリア

 

放射性セシウムと心臓  第4章 放射性セシウムの心臓への影響の病理生理学的特徴

より抜粋

 
ユーリー・バンダジェフスキー著
平沼百合 和訳
 
 放射性セシウムの心臓への直接的影響というのは、他の臓器や組織に比べて、心筋細胞に蓄積しやすい事による(図910)。多分それは、Na+/K+ポンプの機能が強いためである。すなわち、Cs-137 はカリウムに似ているので、心筋細胞によってかなり簡単に吸収されるのである。このプロセスには、細胞膜の構造が関連しており、放射性セシウムは、その構造と容易に反応する。 これは、クレアチンホスホキナーゼのような大変重要な酵素の抑制をきたす。

(中略)クレアチンホスホキナーゼ酵素活性の減少は、心筋細胞のエネルギー複合体における重篤な構造的および代謝的欠陥を示す。これはミトコンドリアの数とサイズの増加、板状クリステの数の増加とその後の破壊として、ミトコンドリアシステムにおける変化として見られる。また、ミトコンドリアの凝集とミトコンドリア間の接触の数の変化としても見られる。

 

○活性酸素と炎症

活性酸素が炎症・アレルギー反応を活性化する新たな仕組みの発見

JST(理事長:沖村憲樹)の研究チームは、活性酸素が病原体感染によって起こる炎症やアレルギー反応を促進する作用を持つこと、その活性酸素の作用を受けるターゲットがASK1Apoptosis signal-regulating kinase 1*1という細胞内タンパク質リン酸化酵素であることを突き止めた。

 

細菌やウイルスなどに感染すると、それらを体内から迅速に排除するため自然免疫システム*2という生体内防御機構が活性化する。自然免疫システムがひとたび病原体の感染を感知すると免疫応答に必須な炎症性サイトカイン*3が産生され、生体内で炎症を引き起こす。一方で、なんらかの原因によりこれらの防御反応が異常に亢進すると、アレルギーや自己免疫疾患の原因にもなる。病原体の感知には、細胞膜受容体であるTLRファミリー*4が重要な働きをしていることが知られているが、本研究では、このファミリーのうち、TLR4という受容体の活性化に伴って特異的に活性酸素が産生され、さらに活性酸素を介して、タンパク質リン酸化酵素であるASK1が活性化されることによって、サイトカインが効率よく産生される仕組みを明らかにした。また、ASK1を働かなくしてしまったマウスにおいては、TLR4受容体活性化によって引き起こされる炎症性サイトカインの過剰産生や、それに伴うショック死が起こりにくくなっていることが判明した。

 

 

○ストロンチウムについて

人間と環境への低レベル放射能の脅威』著者

アーネスト・スターングラス博士のインタビュー記事より

引用

 

S博士「もう一つ言いたいのが、ストロンチウム90は骨に入って、強い電子を放出する。骨髄では赤血球と白血球もつくられているから、ここで異常が起きると、白血病を起こす。また、白血球というのは、体のありとあらゆる病源と戦っているから、白血球がちゃんとつくられないと、これは大都市で警察のストを起こすと犯罪率が一気に高くなるようなものだ。分かるね。ストロンチウム90が白血球を壊せば、体中にがんが起きても止めることができない。ストロンチウム89の半減期は50日で、ストロンチウム90の半減期は28年だから、体に蓄積されていくものだ。」

S博士「さきほどの低レベルの放射能の話に戻るが、人々が間違いを犯した原因のひとつに、放射線によるがんの治療による。これは動物実験で、一週間おきに集中した放射線をあてれば、健全な細胞は元に戻るということから、放射量を細かく分ければ、体には影響が少ないと信じられていたのだ。ところが、内部被ばくの場合は、少ない量でも常に体の中にある訳だから、慢性被ばくと言っても良い。これが何十年間と蓄積されると、ストロンチウム90のように白血球が壊されていけば、肺炎やさまざまな感染が起き易く、免疫力が激しく低下することに繋がるのだよ。」

 

S博士「ついでに、もう一つ重大な話をしよう。ストロンチウム90から出来るのが、イットリウム90だ。これは骨じゃなくて、すい臓に集中する。すい臓というのは、糖尿をおさえるホルモン、インスリンを分泌しているから、ここに異常が出ると糖尿病になる。世界中で、糖尿病が急増しているのは知ってるね。日本は、すでに人口の割合から言えば、アメリカの二倍もいる。そのアメリカだって、イギリスより率が高いのだ。日本では、戦後から現在にかけて、すい臓がんが12倍にもふくれあがっている。50年代の終わりにドイツの動物実験で発見されたのが、ストロンチウム90が電子を放出してイットリウム90になると、骨から肺、心臓、生殖器などに移動するのだが、すい臓に最も高い集中見られたのだ。インスリンがうまく生産されないようになって、血糖値が上がってしまうのだ。今までは放射能が糖尿病と繋がっているなんてまったく認知されていないのだ。これで分かっただろう、国際放射線防護委員会(ICRP)は、当初、放射能の影響として、特定のがんと奇形児くらいしか認めなかったのだ。未熟児、乳児の死亡や、肺、心臓、すい臓、これらの部位への影響はすべて無視されてきたのだ。」

 

○造血幹細胞と活性酸素

造血幹細胞に関する新しい知見


『これまでに造血幹細胞の性質としては自分自身を作り出す「自己複製能」、多くの種類の血球 細胞を作り出す「多分化能」、そして普段はほとんど細胞増殖しないでいる「静止期性」などが 知られています。今回の研究からそれらに加えて、酸素をあまり使わないでエネルギーを産生す る「嫌気性代謝」が新たな性質として見出されました。
また、嫌気性代謝を人為的に活性化することで造血幹細胞の体外維持をすることが可能である ことも示され、これまでの幹細胞の増幅法とは全く異なるより安全な方法の開発につながること が期待されます。』

造血幹細胞
赤血球、白血球、血小板などの血液細胞のもと。造血幹細胞の老化やがん化は白血病を含む血液疾患の発症の原因になると考えられている。

造血幹細胞は体の中の特に酸素が少ない所で生きている。
→解糖系(嫌気性代謝)を利用している
理由:低酸素環境によりミトコンドリアの代謝経路を不活性化させ、
ミトコンドリアを使うことによって生じる活性酸素による老化を防ぐため=幹細胞は活性酸素に弱い

低酸素環境に対して活性化する転写因子HIF-1α及びHIF-1αによって活性化するPdk2とPdk4は各種のがんでも高発現している。

○生殖細胞とミトコンドリア

日本不妊治療学会HPより引用

 

女性の生殖細胞である卵子はとりわけミトコンドリア数が多く、卵子ひとつあたり10万個ものミトコンドリアが含まれています。

排卵から受精、さらに受精後に細胞分裂によって順調にミトコンドリアが増えだすまで、健康に子宮内に着床するための多くのエネルギー源ATPを、すべて当初持ち込んだミトコンドリアでまかなわなくてはならないからです。

さらに、子世代に遺伝して受け継がれるミトコンドリアはすべて母親が持ち込まなければなりません。

したがってミトコンドリアの不調や老化によって活性酸素が増えてしまうと、妊娠のエネルギー源ATPが欠乏し、排卵障害や受精障害、着床障害といった症状を引き起こしてしまいます。

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男性の生殖細胞である精子はもともとミトコンドリアが非常に少ない細胞で、精子ひとつあたりわずか50~100個程度のミトコンドリアしか含まれていません。

精子はこのわずかなミトコンドリアだけで、卵子に到達するための膨大なエネルギー源ATPを産生しなければなりません。

当然、ただでさえわずかなミトコンドリアが不調だと、精子の無力症や運動障害、さらには乏精子症といった症状を引き起こしてしまいます。

 

生殖細胞ミトコンドリア治療には『ミネラルES46』という、ミトコンドリア機能改善能を有する新規組成物「イオン化ミネラル」(ケイ素とアルミニウムが主成分)を用い ます。これはメトセラESシリーズの一つで、不妊治療向け素材として最適化された全く安全な経口成分であり、ミトコンドリアに対して 強力な生物化学的な微小粒子(電子)補給作用を発揮します。ミネラルES46は細胞内部のミトコンドリアに対して、ミクロレベルでの生物化学的な微小粒子(電子)補給をする唯一の成分です。 

 

 

○ミネラル含有熱処理酵母に放射線防護効果を確認

 

ミネラル含有熱処理酵母に放射線防護効果を確認、被ばく後投与でも。放医研・体質研究会の研究チームがマウス実験で実証 放射線被ばく障害の治療剤に展開

 

独立行政法人 放射線医学総合研究所(佐々木 康人 理事長)放射線安全研究センター・レドックス制御研究グループの伊古田暢夫グループリーダー、安西和紀チームリーダーらは、財団法人体質研究会(鳥塚 莞爾 理事長)の鍵谷勤京都大学名誉教授と共同で、ミネラル含有熱処理酵母に放射線障害を防護する効果があることを、マウスを用いた実験で明らかにした。

 

● 作用のしくみについて

ミネラル含有酵母の放射線防護作用のしくみについては今後の研究課題であるが、推察されることの一つとしては、これらのミネラル含有酵母が放射線によって発生する活性酸素類を消去して生体の損傷を防いでいる可能性が上げられる。

また、ミネラル含有酵母中の亜鉛、銅などは、メタロチオネイン*14ヘムオキシゲナーゼ-1*15などの抗酸化酵素を誘導する。また酵母に含まれるβ-グルカン*16免疫賦活作用*17があり、これらの作用によって放射線障害を防護しているとも考えられる。

スーパーオキシド消去活性の高い酵母が、30日生存率向上に効果的で、放射線被ばくにより生じる酸化的ストレスの制御に重要な役割を果たしているものと考えられるが、詳しい防御機構は今後明らかにする必要がある。

○放射線と自然免疫

自然免疫応用技研HPより抜粋

 

放射線によって引き起こされる障害を排除し、修復するのも自然免疫(マクロファージ)の役割である。以下に、自然免疫の機能と放射線障害について紹介する。(図2)

  1. 活性酸素消去: 放射線による障害は、放射線によって体内で発生する活性酸素によるものである。従って、抗酸化能の向上によって、放射線障害の予防に有効に働くことが明らかになっている。生体内には、活性酸素消去酵素「スーパーオキシドジスムダーゼ」(SOD)が存在し、自然免疫システムと連携しており、βグルカンやリポ多糖などが誘導性のSOD誘導に働いていることが知られている(放射線医学総合研究所のHP)
  2. DNA障害細胞の修復: 放射線によって生じる活性酸素・フリーラジカルによってDNAが損傷されると、修復酵素p53が発動し、速やかにDNAを修復する。また、修復が不能な場合、障害を受けた細胞をアポトーシスに導く。アポトーシスとは、細胞の縮小、染色体の凝縮、DNAの断片化によって、細胞が断片化(アポトーシス小体)し、細胞死するものである。アポトーシスに至るメカニズムは、細胞にプログラムされており、能動的な詩であることから“プログラム死”や“細胞自殺”ともいわれる。なお、アポトーシス小体は、マクロファージなどの食細胞によって速やかに貪食・除去される。
  3. 糖脂質の免疫活性化機能: グラム陰性菌の細胞膜を構成する糖脂質(LPS)は、p53の活性化を誘導し、放射線によるDNA損傷の修復機構として働くと考えられている。その結果、異常DNAを持つ細胞の増殖による遺伝的障害や発癌などのリスク抑制に寄与する。マクロファージにはアポトーシスの結果死滅した細胞を貪食して除去する機能がある1)。
  4. 上皮細胞や骨髄細胞の増殖増強: 放射線の障害は分裂が活発な細胞ほどDNA損傷が強く影響するため、細胞死が起こる。腸の上皮細胞や骨髄細胞は分裂が活発であり、放射線により腸障害や白血球の減少が生じる。活性化した自然免疫細胞が分泌するサイトカイン群は腸上皮細胞や骨髄の造血細胞を増殖させる効果を持っている。
  5. 代謝促進による放射性物質の排泄促進: 体内に取り込まれた放射性物質は、体内で代謝されながら徐々に体外に排除されていく。自然免疫は変性したタンパク質や死んだ細胞を排除することにより、代謝を促進することが知られている。また、LPSはニワトリの頭頂骨と大腿骨を用いた研究から、骨代謝を促進することが明らかにされている2)。ストロンチウムはカルシウムと同様に骨に取り込まれる可能性が高い。また、骨は一般に代謝回転が遅く3-4ヶ月もかかるため、ストロンチウムの実効半減期18.6年と長い。そのため、自然免疫の活性化による代謝促進作用による放射性物質の体外への排出促進効果は有望である。

 

○自然免疫の活性化物質による放射線防御作用

自然免疫を活性化する物質について、これまで報告されている放射線障害に対する防除作用の例をいくつか紹介する。

  1. パントエア・アグロメランス由来糖脂質: 私たちの研究グループが長年の研究で発見した自然免疫制御物質であり、マクロファージのTLR-4に結合し、プライミング状態を誘導する機能がある。元々、小麦に共生するグラム陰性菌であるパントエア・アグロメランスの細胞外膜を構成する糖脂質として見いだされ「IP-PA1」と命名した。パントエア・アグロメランスは小麦のみならず、米、ジャガイモ、シイタケ、明日葉、ホウレンソウ、緑茶、海草といった食用植物にも広く存在し、漢方・ハーブ薬剤などにもIP-PA1様の糖脂質が広く分布している。IP-PA1は放射線の内部被爆に対しても効果を示すことが想定されており、現在、研究が進んでいる。
  2. 『丸山ワクチン』は、ヒトの結核治療用に開発されたもので、ヒト型結核菌青山B株から抽出した自然免疫活性化作用を持つ「リポアラビノマンナン」を主成分であり、現在、がんの放射線療法による白血球減少症に有効な医薬品(アンサー20)として承認されている。この効果は、マクロファージ系細胞に作用して増殖刺激因子(CSF)を産生することで、造血幹細胞の増殖を促進し、放射線で障害を受けて減少した白血球を増加させる。実際、G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)は、ブラジル(ゴイアニア被ばく事故)やサン・サルバドル(放射線被ばく事故)で事故後に被ばく者に使用された(原子力百科事典ATOMICA, 放射線防護薬剤)。
  3. 自然免疫細胞の活性化: 自然免疫を活性化する物質として細菌の細胞壁を構成する「ペプチドグリカングラム」、「グラム陰性細菌の糖脂質」、ペプチドグリカンの構成ペプチド糖であるムラミルジペプチド(MDP)誘導体、「細菌製剤」(BCG, 酵母菌、乳酸菌)などである。これらの物質マクロファージを活性化しサイトカインを誘導することが知られており、また、放射線障害を予防することが知られている(原子力百科事典ATOMICA, 放射線防護薬剤)。特にLPSの放射線保護作用は古くより知られている3)。
  4. 抗酸化作用: 細菌製剤のピシバニール(OK-432)は抗酸化作用のあるメタロチオネイン誘導して放射線障害の予防を示す4)。LPSもメタロチオネイン誘導する5)ことから、同様な効果が期待される。

○水素による活性酸素の除去

●医療現場でも認められつつある水素(健康流通新聞2012日11月4日付)

2007年に日本医科大学・大田成男教授ら研究グループがネイチャーメディシンに「ヒドロラジカルを選択的に還元する」という論文を発表し、その後水素の医学的効果に対する研究が進展したことがあげられる。現在では、日本医大をはじめ、東北大、名古屋大、大阪大、筑波大、九州大、慶応大、北里大、順天堂大、京都府立医科大―など国内の有力大学や病院が研究や臨床に参画。(略)現在確認されている水素の効果は、抗酸化作用、エネルギー代謝亢進作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用など。具体的には、心筋梗塞、糖尿病、動脈硬化、虚血再かん流障害、学習・記憶能力の低下防止、脳梗塞、パーキンソン病、ミトコンドリア病、リウマチーなど、生活習慣病や老化に起因するさまざまな症状の予防・改善に関する有効データが発表されている。研究は日進月歩で進歩しており、現在では基礎・動物研究にとどまらず、臨床試験や実際に医療現場で水素を用いた治療が行われている事例も見られるなど、医学的にも安全で有効な素材と認められつつある。

○水素の炎症抑制効果

医療法人社団医献会 辻クリニックFBページより引用

【水素の炎症抑制効果と作用機序】
慢性疾患の多くに「慢性炎症」があり、それに伴う炎症症状(炎症反応)の抑制は、QOL上重要な治療です。
アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチ、他膠原病、慢性気管支炎、気管支ぜんそくなど、慢性的な炎症による症状は大変辛いものです。

『免疫→炎症反応』は生体が自己を異物から守る上で大切な防御システムですが、免疫に伴う炎症反応が強すぎたり、慢性的に継続したりすると、炎症そのもので自身を破壊してしまう。

以前より、炎症の慢性化/強化に活性酸素が関与することはわかっていましたが、最近になってそのシステムが解明されつつあります。

詳細は前回の説明に譲りますが、何らかの原因によって発動した免疫システムは、その連鎖の中で活性酸素が炎症性サイトカインを必要以上に増加させ、炎症が強化されていることがわかっています。

強化された免疫→炎症反応を抑えるために、医療では『ステロイド』『NSAIDS:消炎鎮痛剤』を使用します。

強すぎる炎症反応を抑制するには、大変有効な物質ではありますが、これらには多くの副作用が存在します。

活性酸素による免疫→炎症システムの強化に伴い、ステロイドやNSAIDSを増量せざるを得ない状況が、これらの副作用を強化するもうひとつの原因だと考えています。

当院では昨年春より『水素の抗炎症/消炎鎮痛効果』を確かめてきました。

そこでわかってきたことは
*水素は免疫系を抑制しているのではない
*水素は炎症性メディエーターを減らしているのではない
という事です。

水素は『炎症の増幅を引き起こす活性酸素を除去している』というのが正しいのかもしれません。

その場の消炎鎮痛効果は、炎症の実態である『炎症メディエーター:COX2など』を抑制する必要があるため、これらを抑制する治療が必要となります。

しかし、炎症メディエーターを増幅する活性酸素の発生を放置すると、炎症は徐々に増加し、それに伴って薬剤も徐々に増量せざるを得ないのです。

一般的な消炎鎮痛治療に水素療法を併用すると、
*ステロイド/NSAIDSの減量が可能
*必要以上の免疫→炎症反応の抑制が可能
というメリットがあります。

また、『プラセンタ療法』『ノイロトロピン療法』といった「抗炎症サイトカインを増やす治療」を併用することによって、悪い炎症増加サイクルを『火消しの方向』に持ってゆくことが可能となります。

*変形性関節症
*慢性関節リウマチ
*その他膠原病
*アトピー性皮膚炎
*血管炎
*感染症などの慢性化
その他『ステロイド、鎮痛剤を多用するしかない疾患』に対し、水素の併用療法は大変有効な治療法であると考えます。